次に⑥年金分割について教えてください。年金分割というのはどのような制度なのですか。
これは平成19年4月から始まった割と新しい制度なんだ。少し難しい話しをするけど我慢してね。年金分割(正式には離婚時年金分割)というのは,離婚をした場合に厚生年金保険等(他に国家公務員共済組合などがある。)の「報酬比例部分」の年金額の算定の基礎となる標準報酬について,夫婦であった者の合意又は裁判によって分割割合を定めて,その定めに基づいて,夫婦であった者の一方の請求によって,社会保険庁長官が,標準報酬の改定又は決定を行うというものだよ。
夫の厚生年金が半分もらえるというような単純なものではないのですね。
そうだね。標準報酬を増やしてもらえるだけでその他の受給要件は当然充たす必要はあるし,当然2分の1と決まっているものでもないんだ。
先生は「合意」とおっしゃいましたが,何か書面は必要なのですか?
そうなんだ。「合意」というのは,調停調書か公正証書に記載される必要があるんだ。だから,家事調停を申し立てるか,公証役場に行って公正証書を作成する必要があるよ。
ここでいう「裁判」とは,判決や審判のことを意味するんだ。離婚の裁判や離婚の審判で決める場合だね。
平成20年4月以降に離婚した場合には何か違いがあると聞きましたが。
そうなんだ。よく知っているね。平成20年4月以降に離婚した場合には,平成20年4月から離婚するまでの期間分については,妻の取り分は自動的に2分の1とされるんだ。
そうなんですか。そうすると平成20年4月以降に離婚する場合には,家事調停の申立てや公正証書の作成などは不要になるんですね。
いや,そうとは限らないんだ。平成20年4月以降に離婚する場合であっても自動的に2分の1となるのは平成20年4月以降の分だけなんだ。つまり,平成20年3月以前の分についてはやはり割合を決めなければならないんだよ。
そうだね,分割割合を決めてもそれだけで当然に変わるわけではないので,社会保険事務所に標準報酬の改定又は決定の申立てをする必要があるんだ。しかも,この請求は離婚したときから2年以内に行わなければならないとされているので,注意する必要があるね。
今日は長い時間ありがとうございました。とても勉強になりました。
そういってくれると私もうれしいよ。最後についでだけどとても重要なことを付け加えておくね。②養育費,④慰謝料,⑤財産分与といったお金がからむものは,必ず公正証書か家事調停を申し立てて調書を作っておくことが重要だよ。後で相手方が支払わなかった場合に大きな違いとなってくるので注意して欲しい。今日は本当に基本的な典型事例しか話せなかったけど,実際はいろんな事実が絡み合って複雑なんだ。わずかな事実の違いによって結論が大きく変わってくる可能性があるんだ。困ったことがあったら有利不利を問わず細かい事実を全部伝えて弁護士に相談することを勧めるよ。