とある昼下がりサイド君が何やら困った様子です。
サイド君 実は,父から,祖父の相続について相談されているんだけど………。
たしか,お祖母様は既にお亡くなりになっていて,サイド君のお父様が長男で,お祖父様の面倒も見ているんだったよね。お祖父様お亡くなりになったの?
幸いなことにまだまだ元気なんだけど,最近風邪を引いて寝込んだことから少し気弱になっているんだ。
うん。一人いるんだ。やさしい叔父さんなんだけど,事業に失敗してお金に困っているらしいんだ。それで,最近,祖父のところに頻繁に出入りして,お金を用立ててほしいとお願いしているみたいなんだ。うちの家も生活に余裕があるわけではないので,祖父が,叔父さんにお金を渡したり,自分に有利な遺言書を書かせるのではないかと心配しているんだ。何か良い方法はないかな?
そうね‥,①生前のお祖父様の財産処分をどのようにして制限するかと,②叔父様に一方的に有利な遺言書作成をどのようにして止めるかという点が問題ね。
そうなんだ。①については,成年後見制度の利用を考えてみたけど,祖父はまだまだ元気だし。②については,祖父が遺言書を作成することを制限することはできないように思うんだ。まあ,新しい遺言書を作成し直せば良いんだけど,イタチごっこになるし。
祖父のケースで,①生前の財産処分を制限し,②遺言書の作成も制限する方法はないですかね?
「家族信託」とは,自分の財産を信頼できる人に預けて,預ける目的に従って管理してもらうことだよ。
図解すると,次のようになるんだ。
まず,一番目のお祖父様の生前の財産処分はどうやって防げますか?
上の図を見てもらうと分かると思うけど,財産の管理・運用・処分権限は,サイド君のお父様に移転しているから,お祖父様が勝手に財産を処分することができなくなるんだ。
サイド君ごめんね。ちょっと気を悪くする質問かもしれないけど,そうすると,万が一,サイド君のお父様が勝手にお祖父様の財産を処分してしまうこともあるのではないですか?
サイド君のお父様は,お祖父様との間で信託契約を結び,その契約内容に制約されるし,善良なる管理者の注意義務を負うことになるので,勝手に処分することはできないんだ。もし,心配なら,監督人を別に定めることも可能だよ。
信託契約によって,財産の処分権限が移転しているので,仮に遺言書を作成してもその効力は信託財産には及ばないんだよ。
なるほど!素晴らしい制度ですね。何か注意する点はありますか?
内容を明確化するためにも,信託契約は公正証書にした方が良いと思うよ。それに,信託契約にどういう内容を盛り込むかは,税金の問題を含めて,検討しなければならない法的問題があるから,弁護士に相談した方が良いと思うよ。
「家族信託」は,今日初めて知りましたが,色々活用方法はありそうですね。
そうなんだ。一定程度節税効果もあると言われているんだ。特に高額の不動産をお持ちの方なんかは検討してみる価値はあると思うよ。