遺言の注意点

遺言は、民法で定められています。
遺言には一定の方式があり、守らないと遺言が無効になってしまいますので注意が必要です。

民法960条 遺言は、この法律(民法)に定める方式に従わなければ、することができない。

このように遺言には一定の方式がありますので、それを守らないと遺言が無効になってしまいますので注意してください。

遺言の種類ごとに決まりがあります

自筆証書遺言

民法968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(2)自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

公正証書遺言

民法969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

  1. 証人2人以上の立会いがあること。
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

秘密証書遺言

民法970条 秘密証書によって遺言するには、次に掲げる方式に従わなければならない。

  1. 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
  3. 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

遺言種類別にみる作成の注意点

自筆証書遺言作成時の注意

遺言者が思い立った時に、いつでも、どこでも、手軽に作成することができますが、方式を誤って無効になってしまう、死後遺言の存在を気付いてもらえない可能性がある、または、第三者によって偽造されることがある等の危険性があります。また、死後、家庭裁判所での検認が必要です。

  • タイトルから最後に記載するご自身のお名前まで、全てを自筆で書かないと無効になります。
  • 相続人に財産を残すときには「相続」、相続人以外の者に与えるときには「遺贈」と書きます。
  • 人名・動産・不動産等の記載は正確に(人名の字の間違い、所在地・地番の間違っていると特定ができません。不動産は、登記簿謄本をお手元に用意し、見ながら書くと良いでしょう。)預貯金、株券等も原本をお手元に置き、記入した方が間違いは少ないと思います(預貯金、銀行名、支店名、口座番号、定期預金等は種類も、預金名義も明確に書きます。有価証券等は、会社名、株数もきちんと明記します。)。
  • 日付は必ず入れます。
  • 押印を忘れずに。
  • 全て記入後、書き直しや削除をする場合には法的に定められた方法で行わないと、その変更部分は、無効になってしまいます。「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力がない」(民法968条)

遺言状

●削除・訂正する場合

【上記例】
土地面積が異なっていた場合、訂正する文字を原文を判読できるよう二本線(II)で消し、その箇所に押印。訂正行頭に「この行目○字削除○字加入」または欄外付記にて「○行目の○字削除○字加入」と記入します。全文削除も、同様に二本線で消し、欄外付記にて「○行目○項全文削除」と記入します。

●加入する場合

加入する箇所に押印し、{ を使用し、加入文字を記入、欄外付記にて「○行目○字加入」と書きます。

●訂正に使う印鑑

遺言書の署名下に押した印鑑を使用します。

公正証書遺言の注意

遺言者が口述して作成するので作成者にとっては、一番楽な方法と思われます。家庭裁判所の検認も必要はありません。現在は、事前に公証役場に連絡をとり予約をし、予約した日に間に合うように事前にファクシミリなどで必要書類を送信しておくことが多いようです。

  • 遺言者の印鑑証明
  • 戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本
  • 固定資産評価証明書
  • 証人2人以上の方に立ち会っていただくことになります。
    証人になれない方 (1)未成年者 (2)推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族 (3)公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人です。
  • 証人の方の住民票

※家庭裁判所での検認は必要ありません。
相続人の方が遺言書を直ぐに開き内容を確認することができるわけです。

秘密証書遺言作成時の注意

自筆証書遺言と違い、遺言書があることが明確にでき、しかし、内容は秘密にできる利点があります。

  • 本文は、ワープロ、代筆でも、かまいません。しかし、最後の署名だけは自筆です(屋号、ペンネーム、芸名、雅号、通称でも遺言者と同一性が示せるのであれば有効です。)。
  • 押印、日付は必ず必要です。実印を使用しなければならないという制限はありません。拇印も認められていますが、サインは認められていません。
  • 加除、訂正は自筆証書遺言の方式と同様です。
    遺言書作成後、遺言者はその遺言書を封筒に入れ、使用した印鑑で封印します。
    封印した遺言書を証人2人以上の立会いで、公証人に提出し、遺言者本人が自分のものである旨と、住所、氏名を伝えます。
    公証人は遺言書を提出した日付を封筒に記載し、遺言者、証人とともに署名押印します。
    遺言者はその秘密証書遺言を持ち帰り、公証役場には、その日、秘密証書遺言が作成された事実が記録されます。
  • 家庭裁判所での検認が必要です。