自己破産・民事再生

自己破産

自己破産とは、裁判手続によって借金を全額免除してもらう手続です。
民事再生は個人(小規模零細事業主・サラリーマンなど。)が、破産を避け、原則3年間の期間に、民事再生法に基づく弁済金(計画弁済総額)を払うことで、残余の債務の支払を免れることができます。

自己破産とは、裁判手続によって借金を全額免除してもらう手続です。
不動産等の財産がある場合や免責不許可事由がある場合は、破産管財人が選任され、管財事件になります。これ以外の場合、つまり配当する資産がなかったり、免責不許可事由がない場合には、管財人を選任せず、破産手続開始の決定と同時に破産手続を終了する同時廃止の手続になります。
免責とは、破産手続上の配当によって弁済できない破産者の債務について、裁判によりその責任を免除することをいいます。

自己破産申し立ての条件

債務が「支払不能」の状態にある人 支払不能とは・・・「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」を指し、支払不能の認定は資産・収入・債務額等によりケース・バイ・ケースでなされます。

自己破産の手続き

ご相談 現在の資産の状況や経済的に苦しくなった経緯など、ご事情をお伺いいたします。
受任 弁護士があなたから自己破産を受任すると、受任通知を債権者に発送します。それにより、債権者はあなたに直接請求できなくなり、返済を止めることができます。
申立準備 作成に必要な資料をお預かりするとともにあなたから事情を聴取し、裁判所に提出する申立書を作成します。
審理 裁判所は申立書や申立代理人の意見、(裁判所によっては)審尋の内容を審査し、支払不能であると判断すると「破産手続開始の決定」がなされます。
開始決定 めぼしい財産を所有しておらず、免責不許可事由がない場合には、「同時廃止」により破産手続が終了し、不動産等の財産がある場合、免責不許可事由がある場合には、破産管財人が選任され、管財事件になります。
  管財型 flow_ttl2
破産管財人
と面談
破産管財人があなた(弁護士も同行します)と面談し、破産管財人は、破産に至った経緯、財産の状況・負債の状況を調査します。
破産手続き 換価可能な財産を売却し、金銭に換えます。その金額を、破産法に基づく優先順位に従い配当します。
免責審尋 あなたが裁判所に出向き、免責許可について裁判官からの質問を受けます。弁護士も同行します。
免責許可
決定
免責審尋期日後、免責許可の決定または不許可決定がなされます。決定後2~3週間後くらいに官報に公告されて、その後2週間以内に即時抗告等がなければ免責許可が確定し、税金等を除き、債務の支払義務がなくなります。

Q&A

Q.サラ金等から多重債務を負っているのですが、その解決方法は?
A.負債総額が300万円を超えるようになると扶養家族等の生活状況にもよりますが、20万円以下の収入の場合、毎月の分割で返済するのは困難です。この場合、自己破産・免責の手続を検討すべきです。
Q.自己破産の手続の期間はどのくらいなのですか? その間、支払いをしなければならないのですか?
A.弁護士に依頼してから免責の決定まで、管財人のつかない同時廃止の場合、7か月から1年程度の時間がかかります。弁護士に依頼すれば、弁護士に依頼したときから債務者への弁済をストップすることができ、貸金業者である債権者からの取り立て等の督促も一切なくなります。免責の決定が確定すれば、債権者一覧表に記載した債権者に対する弁済の義務を一切免れ、法的手続を受ける心配も無くなります。
Q.自己破産の決定を受けると何か制限があるのですか?
A.個人が破産宣告を受けても会社を解雇されたり、選挙権・被選挙権を失うことはなく、戸籍、住民票、印鑑証明書などに記載されることもありません。ただし、公認会計士、宅地建物取引業者等の資格制限を受けます。また、破産管財人が選任された場合、破産期間中、管財人との連絡のため、裁判所の許可なしに居住地を離れることができなくなったり、郵便が管財人に配達されたりします。信用情報(ブラックリスト)に載り、5~7年くらいは借金ができなくなります。また、免責を受けた人は、以降7年間は免責を受けることができません。

民事再生

「(小規模)個人再生」は、平成13年4月から施行されました。再建型倒産手続の基本法としての性格をもつ民事再生法(平成12年4月から施行)の特則という形で、より簡易化(各債権者の積極的同意を不要とするなど)したものです。個人(小規模零細事業主・サラリーマンなど。)が、破産を避け、原則3年間の期間に、民事再生法に基づく弁済金(計画弁済総額)を払うことで、残余の債務の支払を免れることができます。 再生手続の効力は申立人のみに及び、保証人等には及びません。

小規模個人再生を利用できる条件

分かりやすく単純化して説明すると

  1. 安定した収入が見込まれる個人で、
  2. 住宅ローンや抵当権等で担保されている債務以外の総額が5,000万円を超えない

場合である必要があります。

住宅ローン条項

破産手続と違い、民事再生手続では、住宅資金特別条項を利用することにより、住宅を手放さずに生活を再建することが可能です。

住宅資金特別条項を利用できる条件

あなたが所有(共有)する自宅の住宅ローンのための(根)抵当権が、自宅(及び敷地)に設定されている場合である必要があります。
自宅に住宅ローン以外の(根)抵当権(仮登記も含む)が設定されている場合は、その(根)抵当権を抹消する等しない限り住宅資金特別条項は利用できません。

ご相談 弁護士に借金の状況、資産や収入の状況を伝えて、大まかな処理方針を決定します。小規模個人再生手続では、安定した収入の有無、自宅に対する担保権の設定状況等が特に問題となります。
受任 弁護士があなたから民事再生を受任すると、受任通知を債権者に発送します。それにより、債権者はあなたに直接請求できなくなり、あなたは支払を止めることができるようになります。
申立準備 申立てに必要な資料をお預かりするとともにあなたから事情を聴取し、裁判所に提出する申立書を作成します。
申立て 申立ては弁護士が行います。
再生委員との
面談
申立てから1週間程度で、裁判所から選任された個人再生委員とあなた(弁護士も同行します。)が面談します。個人再生委員は、再生債務者(あなた)の財産及び収入の状況を調査するとともに、再生債務者(あなた)が、適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をします。
開始決定 再生委員は、裁判所に調査の結果を報告し、その調査の結果を踏まえ、裁判所は開始決定を出します。給与差押等の強制執行がされている場合は強制執行が中止されます。
債権調査 裁判所は再生債権者に対し、債権届出期日を設定し債権の届出を促します。届出された債権(みなし届出も含む。)を債務者が認否し、小規模個人再生手続における債権額を確定させます(小規模個人再生事件では、いわゆる「確定判決効」がありません。小規模個人再生事件では「手続内で確定した債権」と表現し、実体的に確定した債権と区別しています。)。
  債権否認
再生計画案
提出
再生計画案を書面決議します。再生計画案に対し、同意しない再生債権者が総数の半数に満たず、かつ、議決権の額が総額の2分の1を超えないときは、再生計画案が可決されます。
  書面決議
認可決定 裁判所は再生計画案に不認可事由が認められないときは認可決定を出します。再生計画案が認可されると再生計画のとおり債権額が変更され手続は終結します。
弁済 認可決定後、再生計画に従った弁済(支払い)をしていきます。この弁済を怠ると再生計画が取り消され、再生計画によって減額された再生債権がもとの額に戻ってしまうことになります。
弁済終了 再生計画の弁済の遂行が完了すると、再生計画以外の残余債務は免責されます。弁済遂行が困難になった場合でも一定の条件を満たせば、ハードシップ免責により再生計画の残債務を免除される制度もあります。

Q&A

Q.債権者に、いくらを、どのくらいの期間、支払えば残余を免除されるのですか?
A.「小規模個人再生」では、大雑把に言って、3年間、毎月2万7777円(住宅ローンを除く総負債が500万円以下の人)~毎月8万3333円(総負債1500万円以上の人)を支払えば、残余は免除されます。負債が1000万円の人なら、毎月5万5555円です。これは、法が、最低弁済額を、総負債の20%とし、(それが100万円以下でも)最低100万円~(それが300万円を超えても)300万円を、原則3年間(最大5年)で、弁済するものとしているからです。
(注:1.最低弁済額は、生命保険解約戻り金や不動産の売却余剰見込みなど、破産をすれば配当できる金額を下回ることはできません。2.「給与所得者等再生」の場合は、可処分所得の2年分を3年間で弁済することになります。)
Q.バブル崩壊で地価が下がり転売も出来ず、住宅ローンの支払が出来なくなりました。自宅を手放したくないのですが、どのような手段がありますか?
A.「住宅資金特別条項」は、再生債務者が、住宅ローンの支払意欲はあるが、他の一般債務の負担が多く、支払不能により、抵当権実行がされるおそれのある場合、今一度、住宅ローンのリスケジューリング(期間弁済額の変更)をすることで、住宅を守ろうとする制度です。ただし、リスケジューリングといっても、延期期間は、もとの契約から10年を超えずかつ70歳までの期間です。また、不動産価格が下がったことで、ローンの残金をそれにあわせてカットするような制度ではありませんので、注意してください。
Q.「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の対象は?
A.「小規模個人再生」の要件は、「将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること」です。「給与所得者等再生」の要件は、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること」、「収入額の変動の幅が小さいと見込まれること」とされています。
・給与所得者等再生の対象となる職業=「小規模個人再生」
・自営業者=「小規模個人再生」
・医師=「小規模個人再生」
・アルバイト、パート、フリーター
=(条件による)「小規模個人再生」「給与所得者等再生」
・サラリーマン=「給与所得者等再生」
・契約社員、歩合給社員
=(条件による)「給与所得者等再生」(定期的な収入があるか)
・専業主婦=どちらにも当てはまらず、利用できない